新型コロナウイルスの情報は複雑に錯綜し、時がたつにつれてますます分かりにくく出口が見えなくなっています。特にコロナ対策と経済の混乱はトレードオフとなり、社会の分断にもつながる現象も起こってきております。

コロナ以前の金持ち一人勝ち、貧富の格差拡大のひずみが、コロナ対策によって別の型に変化してきております。つまり、コロナの感染は貧冨の差を問わず人を襲います。貧富の差が出てくるのは感染率でなく重症化による死亡率や対策による経済的被害(倒産や失業)です。

この様な複雑な問題は現在の体制では解決できないことは明らかです。厚労省の専門者会議は感染症の研究者が主流でどうしても医療の現場の医師や基礎研究の多様な専門家の意見が反映しない仕組みとなっています。過去における原子力村と似た弊害が目立ってきているのです。

コロナ禍と連動して起こる日本経済の状況は、日を追うごとに悪化しています。トップの図表に示したように日本の主力産業である自動車産業のダメージは深刻です。

更にインバウンド需要や東京五輪特需を当て込んだホテルは倒産の危機にさらされています。インバウンドの蒸発と外出自粛で刀折れ矢尽きたと報じられ、ホテル運営会社のファーストキャビンおよび子会社4社は4月24日、東京地⽅裁判所に破産⼿続開始の申し⽴てを、負債は合計約37億円となる模様です。破産に伴い、直営5施設は営業を終了します。

同じくホテル運営会社のWBFホテル&リゾーツも先月27日、大阪地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、同日に監督命令を受けた。負債総額は約160億円と、コロナ関連では最大の倒産となりました。外出自粛が長引けば、影響はホテル業界の外へと飛び火していき、ホテル運営会社から賃料を得ている不動産会社に波及します。

航空機業界にも深刻な影響が及び、LCC(格安航空会社)を傘下に持つANAホールディングス(HD)は20日、2020年1~3月期の連結最終損益が594億円の赤字だったと発表しました。業界団体のIATA(国際航空運送協会)は2020年の航空業界について、旅客収入が2019年の45%程度になると見込んでいます。

総じていわゆる「回転型ビジネス」は中小企業に多く、緊急事態宣言の延長で中小サービス産業の倒産ラッシュが目前に迫ってきております。それに伴って失業の急増も懸念されます。

景気後退は深刻化し、人々は極力買い物をしなくなりデフレ傾向に拍車がかかります。
それでは、消費の減退で物価が下がるかと云えば、逆の動きも出てくるでしょう。それは財政支出急増によるマネーストック(M2)の急増です。従来、超金融緩和によるマネタリーベースの拡大が日銀の当座預金のブタ積にとどまり、市中に資金が流れてこなかったためインフレにはつながらなかったわけですが、コロナ対策による財政支出の急増の影響でこの流れが変わる可能性が高いのです。

一番怖いのは、政府が国の借金の重さを緩和するため意識的にインフレ政策に進むことです。いわゆるスタグフレーションです。デフレ下のハイパーインフレです。これは一気に進むことはなくデフレスパイラルとハイパーインフレの綱引きの形をとり、「新型スタグフレーション」とでも表現するべき状況が生まれます。

いずれにしても、弱者に一層追い打ちをかける悪い傾向です。コロナ禍が経済に及ぼす影響については、日銀の動きを注視したうえ、改めてお伝えしたいと思います。

末尾のYOUTUBE「コロナとの長期戦:私達の現在地/コロナ格差と世界」はこの複雑な情報をうまく整理し問題点を浮き彫りにしております。1時間15分の動画ですがエッセンシャルワーカー(医療従事者、物流を支える運輸・交通・流通業者など)の待遇を犠牲にした経済発展はコロナとの戦いで見直さざるを得なくなってきていること。格差社会はこの点を隠してきたが、コロナは上流階級も、底辺で社会を支えるエッセンシャルワーカーが居なければ彼らの生活も成り立たないことを浮き彫りにしたのです。

注)「エッセンシャルワーカー(Essential Worker)」とは、私たちが生活を営む上で欠かせない仕事に従事している人々のことを指します。医療従事者、公共交通機関の職員、スーパーやドラッグストアの店員、配達員などが挙げられます。新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、世界中で外出の自粛やロックダウンが相次いだことが、エッセンシャルワーカーという言葉が注目されるきっかけとなりました。

自然免疫と獲得免疫の関係や集団免疫もコロナとの戦いが掘り起こした興味深いテーマだと思います。
この動画は一連の関連動画(児玉教授と金子さんの対談や 渋谷 健司WHO事務局長上級顧問へのインタービュー)をまとめた総集編です。

出演者は小塚かおる(日刊ゲンダイ第一編集局長)、奥村淳(朝日新聞広州支局長)、鈴木耕(編集者・ライター)升味佐枝子(弁護士)の各氏です。中でも升味佐枝子さんの前回動画のまとめは秀逸で、これだけでも視聴の価値があります。