格差拡大とともに中流崩壊が始まった。新型コロナは不可逆的に中流崩壊を加速させる。
高度成長は1964年まで続いた池田勇人内閣に始まり、列島改造計画を実行した田中角栄内閣で結実した。
田中角栄首相は「工業再配置と交通、情報通信の全国的ネットワークの形成をテコにして、人とカネの流れを巨大都市から地方に逆流させる ”地方分散” を推進すること」を趣旨としたものでした。
田中内閣の列島改造計画は日本経済に良い結果をもたらしました。その効果の一つに「分厚い中産階級の形成」が挙げられます。この中産階級の形成は、大都市集中から地方分散による工業再配置と交通、情報通信の全国的ネットワークの形成に支えられていたのです。一億総中流といわれたのはこの時期でした。
それでは、中流崩壊は何時からどのように始まったのでしょうか?
1970年代までは日本は高度成長期でした。この時期、世界の多くの先進国は中産階級が支える豊かで平等な経済を実現していました。
グローバル化と新自由主義は、強きを助け弱きをくじく傾向や自己責任論が横行し、格差の拡大とともに中産階級は2極分化しはじめ、多くが下層化したのです。
為政者は経済の停滞や貧困化を新型コロナのせいにする傾向が強いのです。しかし、2010年のギリシャ危機に発した欧州のソブリン危機は、巨大な債務を生んだのです。PIGS諸国の債務総額は2兆2千800億ドルの巨額に及びました。
日本でも1990年代から低成長時代に入り格差拡大が加速したのです。1985年には相対的貧困率12.0%だったのが2009年には16.0%に上昇しております。子供の貧困率は、更に深刻で1985年・2012年比較で10.9%から16.3%に増加しております。子供の貧困率は先行指標としてみられますので、貧困化を新型コロナのせいにする為政者の言い逃れは如何に無理があるか分かるはずです。
中産階級の復活がコロナ後の経済対策のカギとなります。なぜならコロナ後の社会の仕組みは根本的に変えざるを得ません。高度成長期には整った環境下で「地方分散」=「一億総中流」が可能であったのがコロナ後は置かれた環境が全く異なります。
今年度の当初予算(3月成立)は102兆7000億でした、それが3次にわたる補正予算の積み上げでなんと160兆超に膨れ上がっているのです。国債が90兆2000億(56.3%)にも及びます。
水野和夫著「世界経済の大潮流」(2012年出版)の中にあったと思いますが、「2%以下の超低金利が10年以上続けば既存の経済・社会システムが維持出来ない」。現在すでに8年経過しコロナ危機で更に低金利が続けば確実に危機は迫ってくるものと推定できます。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、日本国債を中国や韓国より下位に格下げしたのは数年以前です。日本国債の格付けを「Aa3」から「A1」に1段階格下げしました。状況はこの時期よりはるかに悪化しております。
「大したことはない」との見方は「何もしないで元に戻るのを待って時間稼ぎをする」に通じます。
伊丹万作の言葉で「騙されること自体が一つの悪である」と云うのがあります。危機的状況下の実体経済とかけ離れた株高は何時か再暴落するに違いありません。
地方分散・分権それに地産地消は、高度成長期からの教訓もあり、中産階級の復権無くして達成できません。中産階級の復活はコロナ後経済を占うカギとなるでしょう。
「無気力、無自覚、無反省、無責任」では深刻なコロナ危機にうち勝つ事は到底できないでしょう。
最後に児玉龍彦&金子勝の最新版動画を添付しておきます。