上の図表は世界主要国のGDPの伸び率をIMFとOECDが予測したものです。日本の成長率が世界の主要国に比べていかに低いかに注目。

新年の投稿はエネルギー問題とする予定でしたが、緊急事態発生のためテーマを変更しました。

年末から経済雑誌の2020年予測特集を読み漁りましたが、いずれも楽観的見方が大勢で首を傾げるばかりでした。
経済界トップ3人の経済予測は、「安定感」「悲観ない」「五輪効果を波及させたい」など正月でもあり楽観論ばかりで他のエコノミストや投資コンサルタントも同様の楽観論が大勢を占めておりました。

2013年から始まった「異次元金融緩和」の矛盾が出始め、マイナス金利の影響で3メガバンクの業務純益の低落、人員・店舗の削減計画など、18年度は前期比17.9%の純益減となった。地銀はより切実で金融庁によると、18年度に赤字だった地銀は全国105行のうち4割の46行だった。さらにそのうち45行が2年連続赤字、うち27行は5年以上の連続。ひとたび赤字に転落すれば抜け出せない泥沼の状況に陥っているのです。

共同通信社をはじめとするマスコミ38社が構成する「日本世論調査会」の調査結果では、アベノミクスに「期待しない」「あまり期待しない」が56%でした。

日本が抱える借金の規模は太平洋戦争の末期とほぼ同じ水準になっています。18年度のGDPに対する借金残高比率は200%、終戦の前年1944年の同比率は204%でした。19年度補正予算4兆5千億円に加え、20年度予算案も2年連続の100兆円超えの見通しで借金残高はさらに上昇します。

このような経済状況の中で、どうやって借金を賄うのでしょうか。仮に将来世代に付け回しができたとしても日銀の債務超過の懸念は払拭できないでしょう。政府直接調達(ヘリコプターマネー)は多くの法改正が伴うことと対外信用の低下のデメリットがあり簡単にできるものではないのです。日銀はアベクロ共同体と云っても、日銀の自衛の意識も働き「やったふり」をするか、株価維持には協力するが国債の増発には制限をかける可能性が強いのです。そうなれば、税収を増やすしか手はなくなるでしょう。

運が悪いといえばその通りですが、折も折緊急事態が発生しました。以下産経新聞から—

イラクの首都バグダッドの国際空港で3日、米軍による空爆でイランの精鋭部隊・革命防衛隊の実力者ソレイマニ司令官らが殺害された。米国防総省が殺害を認める声明を出し、イラン側も死亡を認めた。ソレイマニ司令官はイラン国内で英雄視される存在で、米国とイランの緊張関係がいっそう高まるのは必至だ。
5日には革命防衛隊のデフガン司令官が米CNNテレビの取材で、米国への報復について「軍事施設に対する軍事的な対応になる」と明言した。

産経ビジネス

一方、トランプ米大統領は4日、イランが米軍による革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官殺害の報復として米国民や米施設を攻撃した場合に備え、イランの重要施設など52カ所を攻撃目標に設定したとツイッターで明らかにした。「迅速に甚大な打撃」を与える態勢を整えたと強調し、牽制(けんせい)した。イラン外務省は5日、トランプ氏の発言内容を「国際法違反だ」などと批判し、反発している。

トランプ大統領は同じくツイッターで「アメリカは兵器に2兆ドルかけたばかりだ。わが軍は世界最大かつ最強なのである。イランがアメリカ軍基地やアメリカ国民を攻撃した場合には新調の兵器を送りこむ。何の躊躇もない。」と述べています。

もはや日本が仲裁できる段階ではないでしょう。すぐさま、イランが直接米軍直接攻撃することはないだろうが、最も報復が実施される可能性が高いのは空爆があったイラクです。司令官とともに殺害されたイスラム教シーア派民兵組織「人民動員隊」は無意味になった外国部隊を追い出すために結束するよう求め、駐留米軍を撤退させる法制化を目指す動きを示しています(1月6日駐留米軍撤退が決議されたとの報道あり)。このあたりから緊張が高まりエスカレートしていく可能性が強いのです。

日本人のこの問題に対する危機意識は大変低く、「仲裁」どころか板挟みとなり窮地に立つ恐れが強いのです。自衛隊の中東派遣は実にタイミングが悪かったということになるでしょう。

4日に発表された金価格が一気に136円の値上がりとなりグラム当たり6002円をつけた事実は、世界がいかに危機意識を持っているかを表しております。ドル円は一時107円台を記録し、日経平均株価は23207円(500円近くの下落幅)となったのです。

危機管理の鉄則として「どんな情報も否定するな」そして「どんな情報も鵜呑みにするな」というのがあります。そして「プロは最悪を考える。そしてリカバリープランを一つでなく二つ以上持て」「小さい兆しがいくつか重なった先にリスクがある」と警告しております。

正月早々悪いニュースばかりで恐縮でした。次回は必ずエネルギー問題を取り上げ「自然エネルギーが化石燃料を凌駕する」と題して、世界の潮流として電気料金が画期的に安くなり産業構造を変えるという希望のあるお話をしたいと考えております。

除草剤散布

2020年はどんな年になるか、精一杯情報を集め努力してみましたが、正直云って余りにも判断材料が多すぎしかも複雑化しており、私の力及ばず適切な判断ができませんでした。

一番わからなかったのは景気判断です。2020年の日本の景気は国際情勢や政治状況に絡み急速に変化しており予測不能です。週刊エコノミストが意外にも楽観的な経済見通しを示しているので考えがぐらつきました。結局金融恐慌が来ることは間違いないが、時期については大きな開きがあるのです。時期が決められない議論は不毛な議論かもしれません。

はっきりしているのは、残念ながら生活の危機です。単なる心配事と言ってしまえばそうかも知れませんが、自分自身の問題として語るしかありません。読者の皆さんには無関係かもしれません。でも語らずにはいられない衝動に駆られ記しております。

2019年は歴史上まれに見る災害の年でした。大型台風の襲来、気象変動、温暖化など記憶に新しい変化です。これは2020年にも続くかもしれません。2020年はそれに加えて食品汚染や一部の食品の高騰など生活を襲う出来事が迫っております。

食品汚染については「失うだけの日米FTA―飛んで火に入る夏の虫(東京大学教授 鈴木宣弘)」を参照されたい。

米国は新NAFTA(北米自由貿易協定)において、TPPを上回る厳しい原産地規則(自動車部品など)のほか、食の安全基準(SPS)が貿易の妨げにならないようにすることをTPPよりも強化し、遺伝子組み換え食品の貿易円滑化に重点を置いた条項をTPPよりも強化している。新NAFTAが日米FTAの土台になることは間違いなく、それは、すなわち、TPP以上に厳しい内容を受け入れざるを得ないことを意味している。
 しかも、BSE(牛海綿状脳症)に対応した米国産牛の月齢制限をTPPの事前交渉で20カ月齢から30カ月齢まで緩めたが、その撤廃もすでにスタンバイしている。かつて「日米レモン戦争」で日本車輸入を止めると脅され、日本では禁止の収穫後農薬(防カビ剤)を食品添加物に分類して散布を認めてきたが、今度は、そのせいで米国からの輸入レモンなどのパッケージに防カビ剤名が表示されるのを不当とされ、TPPの裏協議(2国間並行協議)で審査の簡素化を約束したが、表示そのものの撤廃の方向が日米FTAで示されるのも既定事実と思われる。これらも「TPP超え」が明白である。米国の「科学主義」とは、仮に死者がでていても因果関係が特定できるまでは規制してはいけない、というもの。

失うだけの日米FTA―飛んで火に入る夏の虫(東京大学教授 鈴木宣弘)

日米FTAについては、末尾にもっと激しい批判があリます。一部未確認の情報もあり全面的に支持するものではありませんが、例え半分が真実であるにせよ生活に直結する問題なので看過できません。

次に食糧問題ではこちらも重大問題です

中国政府は家畜伝染病「アフリカ豚コレラ」で豚の飼育量が4割弱減ったことを受け、被害にあった生産者への支援を大幅に拡大する。9月には養豚場の新設助成を柱とする対策を打ち出しており、設備の近代化によるアフリカ豚コレラの封じ込めも目指す。ただ、すでに豚肉価格は2月に比べて倍になっており、市民生活への打撃は広がっている。

中国ではアフリカ豚コレラによる殺処分で豚がいなくなった豚舎も少なくない(遼寧省大連市)
中国政府が9月に打ち出した豚肉の生産回復のロードマップ(行程表)は6項目で構成。新設する養豚場の設備に対する最大500万元(約7500万円)の助成や、経営の大規模化の支援、豚を殺処分した養豚場への補助金の増額などを列挙した。
アフリカ豚コレラは強い感染力と致死性を持つウイルス性の伝染病。2018年8月に中国で初めて発生が確認され、19年春までに全土に広がった。農業農村省によると、中国全体で豚の飼育頭数は8月、前年同月に比べ38.7%も減った。需給の逼迫は今後さらに強まる恐れがある。
中国政府が対策をアピールする背景には、豚肉が中国の食卓に欠かせない食材で、対応が遅れれば当局への市民の不満が強まりかねないことがある。農業農村省の于康震副省長はロードマップを発表した際の記者会見で「豚肉は中国にとって最も重要な食品だ。政府の関係部署が連携し、対策を打っていく」と強調した。
しかし、政府が対策をいくら強化しても、市民生活への打撃は避けられそうにない。国家統計局によると、生きた豚1キログラムの価格は8月末で27元と、2月末の11.9元から倍以上に跳ね上がった。この影響から、中国の消費者物価指数(CPI)は8月、前年同月比で2.8%上昇した。
香港調査会社ギャブカル・ドラゴノミクスのアナリスト、アーナン・キュイ氏は「他の国々ではアフリカ豚コレラの根絶に最低5年はかかった。中国ではさらに長い時間がかかる」とみている。

【日本経済新聞:大連=渡辺伸】

日本国内も例外ではない。全国各地で豚コレラ(CSF)が発生している現状を踏まえ農林水産省は12月20日に被害地域に隣接する八都府県に感染予防ワクチンを全頭接種することに決定、神奈川県では約6万頭の豚を対象にワクチン接種をはじめました。

中国では豚コレラの影響で約40%生産量が落ち込み、価格も倍に跳ね上がっている状況下で日本の豚肉・需給が逼迫することは避けられず、米国産の牛肉に置き換えた場合ホルモン肥育牛や有害飼料の食品公害に見舞われ、全問の狼後門の虎となることが避けられないでしょう。

最後に最もシビアな情報をご紹介しておきます。

「農民連食品分析センター」の検査結果図表

日本の小麦の自給率は約14%で、多くを米国、カナダ、オーストラリア、フランスなどからの輸入に頼っている。

 昨年から今年にかけて、「農民連食品分析センター」が日本国内で販売されている小麦粉やパン、パスタなど小麦製品の農薬残留検査を行ったところ、そのほとんどから農薬の成分グリホサートが検出された。国内産の小麦からは検出されていないことから輸入小麦に原因があると思われる。

 一方、米国では市民団体が外食店を調査したところ、全ての店の商品からグリホサートが検出された。日本でもおなじみのドミノピザやダンキンドーナツ、マクドナルドやサブウェイなどの商品からも検出されている。

 グリホサートは2015年にWHOの専門機関(IARC=国際がん研究機関)によって発がん性物質に分類され,その後米国において3件の訴訟で非ホジキシリンパ腫の原因物質として認定されている。(※8月11日にはアメリカでモンサント側にラウンドアップ使用で末期がんになった男性に320億円の支払いを命じる評決が出た。*”除草剤で末期がんに、米裁判 モンサントに約320億円の支払い命じる陪審評決”|AFPBB)

「農民連食品分析センター」

「農民連食品分析センター」の情報については賛否両論あり、検出された量が微量なので健康被害には及ばないと云う意見と例え微量であっても雑草除去農薬が残留すること自体が問題だという意見が対立しています。どちらをとるかは個々人で判断するしかないでしょう。

食の安全を求めれば、食料品の価格高騰に見舞われること間違いありません。

新年の初投稿は7日(火)となります。