複雑系理論
アメリカの脳科学者ウォルター・フリーマンは
「複雑系理論」の中で「脳は複雑系だ」と規定し、人間の心的現象は脳の辺縁系における循環と順番つけていく海馬の働きから成り立っていると主張した。
脳幹の動き、視床下部は体の神経系統から感覚を受取り大域的アトラクターの働きにつながっていく。
混沌からの秩序の生成。すなわち自己組織化が、脳活動の本質である。自然界には、混沌とした状態から秩序が生まれる不思議な現象が存在します。
脳外科医の浅野孝雄さん七十三歳と禅僧の藤田一照さんの対談がNHKの朝の番組で放送されました。
半世紀に渡り外科手術を手がけ脳を構造を知り尽くした浅野さんは、人間の心の働きについてフリーマンの理論にヒントを得、仏陀の教えとの関連性に深い関心を持ったのです。
以下その対談の一部をご紹介します。
脳の中全部に渡って、そしてそれでこの脳の表面をこう回る時にですね、この全て脳の各所に分子でその信号を伝達していくわけです。伝達すると同時に、その各所の分散した機能で、また新たな処理を受けて、そしてその処理を受けた形というのが、またその情報に加えられます。そして加えられたものが、また海馬に戻ってくるんです。完全な循環サイクルなんですね。そういうそのサイクルが、一秒間に大体十回から二十回起こります。そうするとその循環によって「色・受・想・行・識」のそれぞれの蘊(うん)が、ここで海馬に一つにまとめられて、そしてその回転が何回か続いた時に、初めて脳全体の活動が一つのパターンに、パッとよく電気がついたということで漫画で出てきますね。ああいう形でパッとこうアトラクターが、レーザーが光を出すように、一つの考えがポッと出来るわけです。
浅野さんによれば、五蘊は脳の各領域と重なります。
「色」は知覚領。
「受」は視床下部と脳幹
「想」は頭頂葉
「行」は形成力(運動領)
「識」は分別・思考(左の前頭葉)
ということになります。浅野さんは五蘊の意味を、脳科学の視点から解釈しています。「色」とは、仏教では人間の体、木や草、川など姿・形あるもの、そのものを指します。ところが、浅野さんは、姿・形あるものを、目や耳で感じ取る脳の働きとして解釈しています。(以下略)