脳死・俺はまだ生きている

2020-12-11

この記事は2006年フジテレビ、アンビリーバボーで放映された内容をWeb上に公開されていたものです。

2007年11月19日、アメリカ、オクラホマシティ。この日、一人の青年・ザックがバイク事故により、死亡宣告を受けた。彼の脳は取り返しのつかない損傷を負っていた。

ザックの脳を写した画像は深刻な状況を表していた。血流や代謝を測定するPET検査で脳の部分が真っ黒になっていた。
 脳内に全く血液が流れておらず、自発呼吸はなく、刺激に対する反応もない・・・全ての結果が脳死の基準に達していたのだ。

もしやと思って、ダンはザックの手を取ると・・自分の爪を、ザックの爪の間に思いっきりねじ込んだ。すると、痛みに反応したザックは腕を引っ込めたのだ!

「俺はまだ生きてる!死んでない!!」

だが、その声は届くことはなく、臓器提供の準備が着々と進められていった・・。

その頃親族達は、移植コーディネータから今後の流れについて、説明を受けていた。そこへ看護士から報告が医師に入り、移植は急遽中止された。

つまり・・・ザックの脳は死んでいない、彼はまだ生きている!!

 それは、移植チームが到着寸前、まさに間一髪だった。だが一旦、脳死状態になったザックが、目を覚ますかどうかは、彼の生命力にかかっていた。

そして、生体反応から5日後、奇跡が起こった。なんとザックが目を覚ましたのである。

確かに彼は、生き返ったのだ!!

さらにその驚異的な回復ぶりは、病院の医師全員を驚かせた。まさに死の淵から奇跡の生還を果たしたザック。
 しかし、一度脳死と判定された患者が、本当に生き返ることがあるのだろうか?

一方、事故の後遺症が心配されたザックだが、事故前後の記憶障害と、わずかな運動障害が残っただけで、5週間後に転院。懸命なリハビリのおかげで、日常生活にはほぼ支障がないまでに回復していった。そして、リハビリから48日後、ザックは地元の人々の熱狂的な歓迎を受け、自宅に戻った。

脳神経内科医・古川哲雄氏:「脳幹の中に乗降性脳幹網様体というのがありますけども、その部分が残っているとやはり意識は残っていると思いますね。

脳死の患者さんでも家族が面会に来ると、特にお母さんがくると涙を流すという例があるんですよね。表情が違うと言う。これ実際に患者さんを見ている人はよく言われます。

しかしこういった変化はつかむ事はできないわけですよね。脳幹の下の電気活動これはひろう事はできないわけですよ。だけど脳幹の一部は残っている、意識は残っていますからね」

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以上の話しを私なりに考えてみました。先にグリア細胞について說明したのを覚えておられるでしょう。

38億年前に地球上に原始細胞(バクテリア)が出現しました。
10億年前には多細胞生物が出現しました。
500万年前から現代にかけて、人類の出現と科学や文化の発展がありました。

生命の歴史は、この様な遠大な歴史と地球の進化の中で進んだのです。この過程で育まれた「自然の法則」が不思議な人体(特に複雑な脳の構造)を生んだのです。脳幹から全身に通ずる神経系とニューロンの信号伝達系にグリア細胞が大きく関わっている事実が重要です。

グリア細胞にはアストログリア、オリゴデンドログリア、ミクログリアがそれぞれの役割を分担しております。神経軸索は電気信号が導線を伝わるような機能ではなく、活動電位と云って神経軸索の表面にある「電位依存性ナトリウムイオンチャンネル」が開く際に神経軸索の内側に向けて電位変化が生じます。その結果、それが刺激になり、変化したすぐ隣に存在する別の「電位依存性ナトリウムイオンチャンネル」が開きます。そうすると、またその範囲に電位変化が生じて、それが次々と隣へ伝わります。

この様な電位伝達は効率は悪くスピードが遅い筈です。ところがオリゴデンドログリアは軸索に巻き付き、巧みな絶縁機能を発揮し、アストログリアと協同して新幹線並の伝達速度を実現するのです。この機能は神経軸索にもニューロンとシナプスの伝達系にも用いられているのです。

ミクログリアはニューロンの廃棄物処理と修復機能を受け持ち、アストログリアは血管から脳細胞に養分を供給する役割を演じているのです。
すなはち、グリア細胞は原始からニューロンの高度な脳の働きに至る橋渡しをすると同時に、自己の機能向上も果たしているのです。グリア細胞は人類以前の進化過程でも動物に備わった原始の細胞なのです。

以上を踏まえるとグリア細胞が生命力に溢れていることが理解できるでしょう。マウスの実験では脳が虚血状態に陥ってもグリア細胞は数時間は生き残ることが証明されております。グリア細胞は虚血条件に対して格段に高い抵抗性を持ち、培養常態では酸素もブドウ糖も無くても10時間位は平気で生き続けられるのです。

脳神経内科医・古川哲雄氏の見解があながち特異なものはなく、「俺はまだ生きてる!死んでない!!」脳死からの復活物語が荒唐無稽ではないことがご理解いただけたでしょうか?