「シンデミック」の悲劇を断ち切ろう
小泉政権以来、グローバリズムと並行して政権の基本政策となってきた新自由主義が今回のコロナショックでいよいよ見直さざるを得ない状況となってきました。
つまりコロナ禍で新自由主義の弊害が表面化してきたのです。コロナがその弊害を浮き彫りにしたと云っても間違いではないでしょう。
云うまでもないことですが念のためにその結果を確認をしておきます。
1. 弱肉強食の世界が拡大したこと
2. 強い企業がもうかれば下にその儲けが滴り落ちて来ると云う「トリクルダウン」の幻想が破綻した
3. 格差が拡大し非正規労働が4割を占めるに至り実質賃金が長期にわたり低下した
4. 「改革」の名のもとに民営化が進められ新しい利権が生まれ、社会的ひずみが生じた
5. 縦割りの弊害で、国民の叡知を生かす事が出来ず新事業や新開発が遅れた
6. 大都市集中が極端に進み、地方の切り捨て、地方経済のひっ迫を招いた
以上の社会的ひずみは新型コロナウイルスの感染爆発と重なりますます増幅されました。
国連開発計画(UNDP)の報告がその状況を克明に記しております。
要点のみ下記します。
● パンデミックの結果、世界は10兆ドルの損失を負うことになる
● 発展途上国の被害は特に深刻で労働人口の半分が職を失う
● 世界の一人当たり所得が4%失われる
● 食料危機と医療崩壊が途上国を襲う
皆さんは「シンデミック」と云う言葉を耳にしたことがあるでしょうか?
「いまわたしたちが直面しているのはシンデミック(複数の感染症の組み合わせによる複合的な影響)です」と、コロンビア大学メールマン公衆衛生大学院疫学部教授のチャールズ・ブラナスは語っています。さらに「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行と並んで人種的な不平等が蔓延しており、ふたつの問題が一体化したことで米国の問題が非常に深刻化しています」と付け加えています。
つまり、言葉の本来の意味は、2つの感染症が重なって深刻な事態を招くことを云うのですが、コロナ禍ではCOVID-19の流行に重ねて経済恐慌などの社会的・政治的・文化的・精神的影響が浮き彫りになる事を指摘するのにこの言葉を用いるのです。
UNDPの報告は正に「シンデミック」の指摘に相当します。
次に日本の国内に目を移して問題点を探ります。
経済の理解が乏しい現政権はコロナ対策と経済対策が両立するとの幻想にとらわれ有効な対策を打ち出しておりません。つまり既に使い古した「新自由主義」をこの期に及んで振りかざし強引に突破しようとしています。竹中平蔵、デビッド・アトキンソンの両氏など新自由主義の先導役を抱え込み改革の名のもと格差拡大路線に突き進む姿勢をあらわにしてきているのす。
こんな状況下で、コロナ対策の実効性に関係なく五輪を強行する強い意志が感じられます。感染症対策の常識から云えば、各種GoTo施策や外国人の出入国緩和などは徹底したPCR検査を前提とし陽性者を厳密に隔離するのが当然の行動ですが、この世界の常識を無視する態度は断じて許されません。
検査の精度を勝手に7割と前提し、それを理由に検査は万能ではないとする暴論が跋扈しています。検査方法の違いを意識的に無視して、精度の悪い抗原検査や精度の悪いPCR検査などを引き合いに出して結論を誘導するなどもっての他です。精度の高いPCR検査器の自動機や精度の高い試薬が容易に手に入ることは今や当たり前で、少なくとも90%の精度は保証できる環境が目の前にあるのです。
やるべきことをやらないでコロナ対策と経済対策が両立するはずはありません。あと5~6か月で結果責任が厳しく問われることになるでしょう。格差の拡大下でコロナ対策に失敗することこそ「シンデミック」の悲劇なのです。
イタリアで深刻なコロナ禍に直面し、精神が荒廃した状況に苦しみ、デカメロン運動などで文化の再興に尽くし、外国人で異例の表彰をうけた内田洋子氏の報告などが参考になります。
野党の結束はうまくいっているように見えますが、足らないのはコロナ対策と新自由主義の徹底的批判です。
小沢一郎、海江田万里の両氏が五輪委員会の顧問になっていたり、消費税減税が野党と統一のメインテーマになっていたり、もっとやることがあるだろうと残念な点はありますが、枝野代表が2年間限定と云っていることは評価します。
以下は、コロナ後の社会設計として「ベーシックサービス」で持続可能な社会を提唱する井出英作教授の動画です。社会的サービスの無償化で「公助・共助・自助」と、新自由主義の考えをひっくり返す政策を提案する画期的な主張が展開されています。特に動画の後半に注目いただきたいと思います。
財政学者・ 井手英策さん(慶應義塾大学経済学部教授)