上図は東京大学先端技術研究所の児玉教授が金子教授との対談動画の中で、精密抗体検査の結果を表したものです。ノイズを拾う精度の悪い検査ではこの様な詳細な分析結果は出ません。

これで分かった事は左図の通り一人の人間の中でも3~5種の変種が同時に存在すると云うことです。
もともとRNAウイルスは変異しやすい種であり同じ地域の中でも、また一人の人間の中でも異なる株が共存する事が分かってきました。

 

一般的に感染力が強力な株ほど持続力は弱いと云われています。逆に持続力が強い株は感染力は弱いものの、しつこく根付く性格があるのです。それを模式化した図が右の図です。若い人が両方の株を同時に持ち、しかも無症状である事例が一番厄介な事だと児玉教授は指摘されています。

以上の問題の解決策については諸説あるので、今回は共通的な検査についてのみ下図にてご紹介します。

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世界50か国に拡がった新型変異種について基本的な情報は、BBCニュースが参考になります。

新型ウイルスの変異種、いまわかっていること – BBCニュース—–

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-55391842

以下要点のみ引用します

世界の多くの場所で発見されている新型ウイルスは、中国・武漢市で最初に検出された新型ウイルスと同じではない。ヨーロッパでは今年2月、変異種D614Gが出現。これまでに世界で広がっている新型ウイルスは、圧倒的にこの変異種だ。A222Vという名の変異種は欧州全域に拡大した。スペインで夏休み期間に出現したとみられている。

今回の変異種は、次の3点がみられることから注目を集めている。
◎ 新型ウイルスの他の変異種と急速に入れ替わっている
◎ 新型ウイルスの重要と思われる部分に影響を与える変異をしている
◎ 変異の一部は新型ウイルスの感染力を強めることが研究で確認されている
これらは、ウイルスがより広がりやすいことを示している。

英グラスゴー大学のデイヴィッド・ロバートソン教授は18日の発表で、「新型ウイルスはおそらく、ワクチンを逃げ延びる変異をするだろう」と結論づけた。

それはつまり、インフルエンザのように、絶えずワクチンを最新のものにしていく必要があることを意味する。私たちにとって幸いなのは、接種が始まった新型ウイルスのワクチンは、簡単に手を加えられることだ。

(引用終わり)

英国の変異種のほか、南アフリカの変異種、最近のブラジル型変異種、いずれも感染力が強く日本にも入ってきており今後目が離せない状況になっています。次回の投稿も多分この話題になると思います。

最後に東京大学先端技術研究所の児玉教授が金子教授との対談動画のURLを載せておきます。
https://youtu.be/hVtn7Br-PWw

年初にご紹介した河岡義裕教授へのインタービュー記事をまとめた「新型コロナウイルスを制圧する」と云う本に基ずき、まず基本的なところからスタートしたいと思います。

正確を期するため著書の一部を抜き書きする形となりますが、解説も交えてお伝えするのでご容赦いただきたいと思います。「カッコ内」が抜き書き、その他が解説と考えてください。

「コロナとは王冠を表しますが、コロナウイルスは外側にスパイクと呼ばれる突起があるのが特徴です。このスパイクは鍵だと考えてみてください。人間などの生物の細胞表面には受容体である鍵穴が存在します。コロナウイルスの鍵をこれにはめることで、ウイルスは細胞に侵入し、感染が成立するのです。
スパイクはSタンパク質から成り立っています。このSタンパク質が細胞の受容体に結合することで、ウイルスは細胞に侵入します。」

ところで最近話題となっているワクチンには大きく分けて生ワクチンや不活化ワクチンがありますが、注目は遺伝子ワクチンです。遺伝子ワクチンには、DNAワクチンとメッセンジャーRNAワクチンがあることはご承知の通りです。

東京大学医科学研究所の石井健教授のグループは、生ワクチン・不活化ワクチンの研究を基礎にmRNAワクチン(メッセンジャーRNAワクチン)の開発を企業とともに進めております。

日本政府はファイザーやモデルナ等の外国メーカーに依存する姿勢のため、国産ワクチンには僅かしか開発資金を投入しておりません。その規模は外国企業の開発資金に比べて十分の一以下です。

それでは国産ワクチンの開発について、東京大学医科学研究所の河岡教授や石井教授はどのように考えているのでしょう?

「メッセンジャーRNAワクチンの開発から臨床研究までのプロセスでは、まずはmRNAを作成してマウスに投与します。人間と同様に4週間もすれば抗体ができるのでそれがウイルスの増殖を抑制するかどうかを、細胞を使って観察します。マウスでそのことが確認されれば、次はハムスターで実験します。ハムスターは新型コロナウイルスが増殖する動物だからです。ウイルスが身体に侵入することと、感染して病気になることは別です。ウイルスが入っても、細胞に侵入することをmRNAワクチンで防ぐことが出来れば、病気にはなりません。
ここで効果が認められれば、人に摂取することができるワクチンを作成します。GMPと云う医薬品製造と品質管理の基準があり、人に対する医薬品の場合は、高い基準の施設で製造しなければなりません。その上で、このワクチンをサルなどの動物に摂取して、毒性と有効性を検証します。そのデーターをもって、ようやく人を対象としてワクチンの有効性や安全性を確かめる臨床試験となります。この段階を第一相といいます。
次に用量などを確かめる第二相、更に多数の人を対象にして効果を見る第三相試験まで行い、ここで承認されてようやく、ワクチンとして実用化できるのです。WHOはワクチンの開発までに12か月から18か月を想定していると云っています。これはすべての過程がうまくいっての話です。拙速な実用化は弊害も大きく、望ましくないと考えております。」

東京大学医科学研究所の河岡教授はこれまで不可能とされていたインフルエンザウイルスを人工的に作る技術を世界で初めて開発、エボラウイルスの人工合成したワクチンの臨床研究も行った実績を持っております。ウインスコン大学で動物実験のノウハウを蓄積し、ウイルスを人工的に作る技術(リバース・ジェネティクス)についての世界的権威です。

日本では子宮頸がんのワクチンを打った副反応で人が苦しむ苦い経験があります。
新型コロナウイルスでは、ADE(抗体依存性感染増強)が副反応の最大の問題です。東京大学医科学研究所のワクチン開発は動物実験から始まり非常に地味な、むしろ嫌われる実験から踏み込んでおります。従って時間がかかるのは当然です。実験動物もこの過程で最適なものを発掘しております。

「研究者は賢すぎない方がいいような気がします。賢いといろんなことを考えすぎてしまい、手が動かなくなります。もちろん、ものすごく賢い人はいいと思うのですが、中途半端に賢いと、どうも新しいことを見つけることができない人が少なからずいます。あまり考えずに、まずは手を動かすほうが運を引き寄せられるかもしれません。」

河岡教授と石井教授のグループは踏むべきステップを確実に進め、到達したときに必ず国産ワクチンや治療薬が注目される時期が来ると信じております。その時期は目途がつくのが今期末、実用化が来期後半と踏んでいるようです。急がば回れで、地味で着実な計画を信じるしかないでしょう。

次回は突然現れた変異種、英国型と南アフリカ型の実態に触れてみたいと考えます。どうやらマイナーチェンジでなくフルヴァージョンアップのようです。新新型かもしれません。

最後に石井健教授の講演、日本記者クラブの動画を添付しておきます。