米CNNは今月、米国富裕層の資産がコロナ禍の3か月で5650億ドル(約62兆円)増えたと云うシンクタンクの報告書を報じた。その後NY株が急落、乱髙下を生じているものの、世界的に行われているコロナを巡る財政膨張と金融緩和による中央銀行の「官製相場」が影響しており、これによって貧富の格差がますます拡大しているのです。

現在のところ日本はほぼNY株に同調して株高を生じているのですが、これは何時までも続くことはないでしょう。理由はいくつかありますが、主な理由は次の6点です。

1.国の債務残高をGDP比率で国際比較すると上の図表となります。2019年のデーター(コロナショック前)ですが、この時点ですに先進国では、GDP比で最悪の債務残高となっているのです。

2.日本経済は、今回のコロナ禍以前の2019年10~12月期にすでに消費税10%導入の影響が顕著に現れ、GDPは前年同期比1.8%減、年率換算で7.1%減となっていたのです。民間シンクタンク各社はコロナ禍が直撃した今年4~6月期に関しても、年率20%のマイナスになる見通しを示しております。1.の債務残高(GDP比)の分母のGDPが大幅に低下し分子の財務負担が大幅に増加することが確実だとすれば、240%から250%超となり出口が塞がれてしまうでしょう。

3.米国の中央銀行にあたるFRBはゼロ金利を2022年まで継続する方針を6月10日に発表しました。これに対して日本経済がそれまで持ち続けるとは到底考えられません。米国経済がコロナショックで甚大な影響を受けているとはいえ、体力の差は歴然としてあります。この差がある限り、NY株に日経平均が同期するパターンは、いずれ崩れ去る事になります。

4.消費支出の減少と失業の急増。


総務省が5日発表した4月の家計調査によると2人以上世帯の消費支出は1世帯あたり26万7922円と、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比11.1%減少した。7カ月連続の減少で、前年同月比の比較が可能な2001年以降、過去最大の減少率となった。新型コロナウイルス感染症の感染拡大による緊急事態宣言の発出などで外出・営業自粛となった影響が出ました。
厚生労働省によりますと、新型コロナウイルスの影響による経営悪化を理由に解雇されたり雇い止めにあったりした人は、見込みも含めると、ことし1月末から先月29日までで1万6723人に上っています。

5.国債依存度リーマンショック超え。
政府は5月27日、総額31.4兆円の2020年度第2次補正予算案を閣議決定しました。新型コロナウイルス感染拡大による社会・経済への影響に対応するためのもので、補正予算として過去最大規模。これにより、一般会計総額は160.3兆円に膨らむ。2次補正の財源は全額国債発行(借金)で賄う。2次補正後の新規国債発行額は、当初予算時点のほぼ3倍に相当する90.2兆円となり、過去最大を更新。歳入に占める借金の割合(国債依存度)は当初予算段階では31.7%、1次補正後に45.4%となったが、2次補正では56.3%に跳ね上がり、リーマン・ショック後の09年度の52.1%を超える。 補正予算には、経済の停滞による税収減は織り込まれていない。今後、歳入の減額補正があれば、国債依存はさらに高まる。
世界の先進国は既にコロナショックで膨張した財政の後始末を議論する段階に入っているが、日本では全くそのような動きは表われていない。

6.ダブル災害に襲われたら日本経済は再起不能となる。

上の図で大災害のダメージが如何に甚大かお分かりいただけたと思いますが、ここでは仮定の話は置いておいて、それに備える対策だけは平時でも必須だと云うことを強調しておきます。図表のように、対策準備費だけでも30兆円は必要です。少子高齢化、自然災害、感染症、この三つから逃れることができない災害列島日本の宿命でしょうか?


この期に及んでも、日本の国債は円で賄われ、資産の裏付けが十分あるので全く心配ないと云う財政拡大論(シムズ理論やMMT)が横行しております。アベノミクスこそがMMTの実践であったことを明らかにした動画を見つけましたのでご紹介しておきます。この動画は麻生太郎・現財務大臣が現職に就任する以前のものと思われますが、アベノミクスの財政拡大路線を見事に裏付ける、分かりやすい説明となっております。

ここでは、三つの矛盾を指摘しておきます。

1.おそらく現在では、麻生氏は財政拡大一辺倒からすでに考えを変えられているはずですが、先に説明のコロナショックでズタズタになった日本の財政は国際信用を著しく低下させ2022年に向かってV字回復は困難と云わざるを得ません。
この様な環境下でシムズ理論やMMTが受け入れられる余地は皆無と云っても良いでしょう。

2.上掲の図表はすべて財務省ホームページの「財政を考える」から引用したものですが、当然のことながら財務省としては財政保守の基本姿勢を崩してはおりません。コロナ危機に対処するための財政支出は認めざるを得ませんが、基本姿勢はポストコロナの財政の立て直しを考えていると云うことで、その意味では健全なのかもしれません。MMT論者は財務省を激しく敵視しますが、これも時と場合で、「持続性とバランス」を考慮したうえでなければ賛同できません。

3.有名な経済学者がコロナ対策費の後始末は日銀が国債を買うのだから「日銀が持ち続ければインフレにも増税にもならない。」と云っていました。今までも日銀のバランスシートについて何度か書いてきたのですが、この発言は日銀が債務超過となるリスクを無視しています。第2次世界大戦の戦後を経験したことがない人が大多数である今日、その途端の苦しみを忘れるなと云っても通用しないかもしれません。金融(お金の貸し借りなど)は信用の裏付けなくして成立しないと云うことを忘れないでほしい。

欧米先進国は既に膨大なコロナ対策による財政破綻を防ぐ方策について議論を始めているのです。日本人はあまりにものんき過ぎるのではないでしょうか。新型コロナと経済は「前門のオオカミ後門のトラ」であり、どちらの対策を優先するかの問題ではありえないことを銘記するべきです。

通常は、命の危険は、生活の危機につながり、最終的には経済恐慌となります。この間、タイムラグがあります。
しかし今回のように感染症のパンデミックが起こるとほとんど同時発生的に連発するのです。

この3つの危機が時を置いて逐次発生する場合は比較的に対策がたてやすいのですが、同時発生の場合は予測が難しく、世間は不安と焦りに満ち溢れるのです。現在の状況がこれに当たっております。

それでは全く打つ手がないのでしょうか?そんな状態では身を守る術を失います。試行錯誤を恐れず、出来ることはすべてやってみるしかありません。逃げたら負けです。

以前から云っているように、先ずは情報を集めることです。前もって収集した情報も総動員しなければなりません。今回不十分ながらこの事を基準に対策を立ててみました。人それぞれ置かれた条件が異なりますのでこれから述べることが万人に適用できるとは思いませんが、一つの事例として参考にしていただければと幸いです。

先ず、30兆円規模の政府の経済対策が可能か、そしてその効果はどうかを考えてみました。命も生活もすべてカネにかかっているからです。つまり経済財政政策にかかっているからです。

保有する情報の中から例によって日本銀行営業毎旬報告を取り出しました。これは日銀のバランスシートです。まず最近の報告、2020年3月10日現在と2019年3月10日現在のバランスシートを元に勘定科目を分かりやすくまとめてみました。この比較表が冒頭の図表です。

資産の部では国債が478.04兆円から494.91兆円に16.87兆円増えております。次に社債とETF等の投資信託は31.67兆円から36.78兆円に5.11兆円増えております。外債等でも2.9兆円増えています、リスク資産の増分の合計は8.08兆円となります。

負債の部では日銀券の発行は大幅には増えておりません。増えているのは当座預金です375.24兆円から392.32兆円に17.08兆円増加しております。当座預金は、市中銀行から日銀が買い上げた国債の代金を、優良な借り手がいないので日銀の当座預金にプールしているのが殆どです。法定積立金もありますが、国債の代金が殆どです。これは文字通り、日銀にとっては負債なのです。

日銀は金融緩和で市中にお金を行き渡らせ経済活動を活発にさせる目的であったのですが、このお金が停滞して日銀に貯めこまれ、皮肉なことにこれを原資にして国債やETFなどの債券を買続けているのです。私も単純な疑問を持ちました、それでは市中銀行はなぜ当座預金を取り崩さないのか、もし取り崩したらどうなるのだろう?

これには金利政策や為替、企業の投資性向など複雑に絡んでおり、日銀の市中銀行に対する管理指導の誘導も関与しているとも云えます。不可思議な問題です。ただはっきり言えることは日銀はイールドカーブコントロール(高度な金利操作)と云う非常に狭い道しか選択肢がなく、明らかに異次元の金融緩和からの出口を失っているということです。

国債の利回りの低下、社債やETFなどの株価連動の投資信託など株価の急激な暴落で日銀の資産価値低落は避けられません。黒田総裁は昨年の記者会見で投資信託の平均取得価格は18000円程度ともらしたことがあると云う記憶があります。それ以来更に取得価格が上がっているので平均取得価格は18500円程度にはなっているのではないかと推定できます。昨今の株価から判断すると10%程度の損失が出ているとみられます。
あまりにも過小な引当金・資本金・準備金の合計額と比較すれば、日銀のリスク資産の損失がいかに大きいのかお分かりになるでしょう。

財政法・日銀法の制約から政府紙幣発行(ヘリコプターマネー)は当面不可能です。国債の利回りが目先マイナスになるのは避けられないとすれば、財源は増税に頼るか日経連企業の負担で肩代わりさせるしか方法はないでしょう。消費税の減税など夢物語でしかありません。

新型コロナウイルスの対策がますます狭い道を模索して進まざるを得ないこととセットで経済対策も選択幅が狭く、相似形となっている実態を直視しなければなりません。

米国のFRB(米連銀)は13日に0.5%の利下げを発表したばかりです。本日、新型コロナウイルスの脅威が欧米諸国に急拡大することが明白となるとみてFRBは更なる利下げ1.0%に踏み切ったのです。これによって、株価が大幅に揺れ戻したのですが、問題は債券価格の低下が止まらない状況が気がかりです。社債市場が特に大きく下げているようです。

更に、為替が乱高下しております。出口を失った日銀はETFがダメなら米国の債券市場にシフトするのではないかと想像できます。折しもトランプ大統領はドル資産を買ってくれと日欧に迫っています。

当面はFRBの利下げによる超金融緩和が株価や債券相場の暴落を防ぐ効果を発揮できるかどうかにかかっております。市場がFRBのごりやくを見切った途端にリーマンショック級の金融恐慌がやってくるのは必至です。投資家の一部には日経平均株価、11,000円に向かうとみる筋もあります。

いずれにしても金融政策の結果、効果がなければ、新型コロナウイルスのパンデミックと経済恐慌の推移は同期するとみること、しかも今のところ予測はつかない段階で慎重に様子を見ておくしか方法はないこと、残念ながらそうとしか申し上げられません。

出来ることはすべてやると云う方針でいろいろ動いてはいますが、最近やったことを付記しておきます。

●高性能体温計(15秒計)を購入しました。出かけるとき常に携行しております。その場で測って入場・入店が出来るよう、また毎日家でも測定するため。

●HEPAフィルター付き空気清浄機を購入しました。(エアロゾル対策です)

●HEPAフィルター付き掃除機を購入しました。(エアロゾル対策です)

●Amazonの電子BOOkの有料会員に入りました。
(図書館が実質使えなくなる。本屋さんで図書を長時間かけて選ぶことも避けられる)

●床屋、歯医者、眼科、内科の検査等の密閉空間に近づかないよう。いち早く片付けておきました。

●株価・債券・金価格などの経済情報、国際情報などがリアルタイムで掴めるよう有料情報を含め用意しました。

●家で体を鍛えられるよう最低限の健康器具(ステップ台、運動用ゴム紐、バランスボールなど)を用意しました。

些細な抵抗ですが、やらないよりましではないかと考えております。皆さんもそれぞれ出来ることを考えてみてください。